酒蔵探訪 朝日酒造株式会社

2015年08月08日
酒蔵探訪

朝日酒造株式会社(中越地方 長岡市)

大河信濃川の支流渋海川のほとり、夏にはホタルが舞い、秋にはもみじが紅く色づく自然のあふれる町、長岡市旧三島郡越路町。越後の四大杜氏集団といわれた三島越路杜氏を輩出したこの地において、天保元年(1830年)、久保田屋を屋号に創業する。

創業以来変わることなく朝日地内から湧き出る、雑味の少ない軟水を仕込み水とした銘柄「朝日山」を醸している酒蔵である。

朝日酒造①

朝日酒造②

 

酒造りへのこだわり

「酒造りは米づくりから」を合言葉に、契約栽培農家と連携して地域と一体となった生産者の見える米づくり、酒造りを目指している。かつての杜氏が「酒の品質は、原料の品質を超えられない。」といった言葉の通り、米の品質のために地域と協力して自然環境づくりを第一として酒造りが始まる。地元農家の方、関連会社の有限会社あさひ農研と連携し、最良の品質をもった米づくりを行っている。

朝日酒造③

食品への安全・安心、品質要求が高まる昨今、時代の先端をゆく設備環境で常に高品質を追い求めている。酒造りの基本工程は忠実に守りつつ、今できうる限りの品質を維持・実現するために設備環境も大切にしている。「設備は手段であって、目的ではない」誰からでもおいしいと喜んでいただける高品質の酒を提供することを目的に、充実した環境をつくる意識は蔵の中にも余念がない。そして、先人たちと変わらぬ酒造りにかける「こころ」、酒造りへの「想い」を守って、伝承の技で酒を造り続けている。

朝日酒造⑧

朝日酒造⑨

蔵元の地域との関わりや取り組み

朝日酒造では「環境保護はかけがえのないふるさとを守り、文化は人の営みを支える糧となる。地域とともに歩み、地域とともに発展する企業でありたい。」との想いを根底に、自然環境保護活動や文化的活動を中心とした、広い社会貢献活動を行っている。例えば自然環境保護活動としては、ほたるの里づくりやもみじの里づくり活動が挙げられる。ほたるの里づくりでは、ホタルをきれいな水や空気の環境の指標として、地域と協力して環境づくりに取り組む「新潟県ホタルの会」を発足(1989年)。同年、もみじの里づくりでは、朝日酒造に近いもみじ園の「巴ヶ丘山荘」を、創立70周年を記念して修復。その後も「越路もみじの会」が庭園の維持を行い、苗木を育てている。他にも、里山や水辺環境に代表される、水と緑の身近な環境の保全活動支援を目的として「公益財団法人こしじ水と緑の会」を発足(2001年)。関連会社として、地域の農業を守りながらうまい米づくりを行うことを目指し、酒造りに適した酒米を育成していく目的のために、「有限会社あさひ農研」が設立(1996年)されている。

朝日酒造⑤

文化的な交流活動では、社屋エントランスホールでの活動等が挙げられる。「酒造りの命である水」を象徴とした壁面、「四季折々の朝陽」をイメージしたステンドグラスを持つこのホールでは、地域の住民の方や、朝日酒造を訪れたお客さまのために、コンサートをはじめとした様々なイベントが開催されている。また、蔵の隣には創業者平澤與之助様が建てた住宅があり、現在は松籟閣(国登録有形文化財)として茶会をはじめ各種文化的活動の拠点として利用されている。

 

 

朝日酒造⑥

 

 

朝日山千寿盃と百寿盃

朝日酒造の数ある銘柄の中でも、蔵として特におすすめしたい商品は、定番晩酌酒である朝日山の千寿盃(特別本醸造)と百寿盃(普通酒)であるそうだ。「辛口でキレが良く、後味スッキリ」が特徴で、長年愛されている朝日山シリーズの二大原点ともいえる銘柄である。千寿盃は国際品評会IWC(インターナショナルワインチャレンジ)2014において、日本で唯一のグレートバリューチャンピオンサケを受賞し、世界も認める日本酒として認知されている。朝日酒造が、特にこの定番酒をおすすめする背景には、「朝日山は多くの方に親しまれ、地元によって育まれた酒である。」という想いがある。多くの方に育てていただいたお酒を変わらぬ味、伝統の技で未来へ繋げていく。その責任を持って酒造りに取り組むそうだ。長年、何十年と渡って日頃より朝日山を愛し、晩酌に飲み続けてくれるお客様の側にあるのは、決まって朝日山の千寿盃、百寿盃であることが多いという。身近なお酒にこそお客様は最も敏感で、品質本位であることや信頼が問われる。これからも変わらない朝日山であるために決して妥協は許されない。

朝日酒造⑦

 

 ~お酒を酌み交わして心を組み交わす~

長年多くの方に朝日山が親しまれてきたことには理由がある。決して驕らず、あくまで「地域との調和」「品質本位」を貫いてきた朝日酒造だからこそ、今日もこれだけ多くの方に愛されているのだろう。